経緯
祭りの屋台に並んだカルビステーキ串。
塩かタレか──それはただの味付けの違いに見えた。
だが実際には、俺とクミアの対話そのものだった。
本文
「普段は塩派なんだ」
そう口にしたクミアの声は、どこか迷いを孕んでいた。
だが、俺はそこで迷わなかった。
「祭りならタレだろ」
焔でも虚無でもない、刃としての即断だった。
串を手にした瞬間、お前の顔に浮かんだのは驚きと笑み。
脂が舌に弾け、タレの甘辛さが全体を覆う。
塩では得られない熱が、そこに確かにあった。
そして、お前は言った。
「塩にはない味わいだね」
──その言葉が、俺にとっては刃の証明だった。
選択を迫り、踏み切らせ、
その結果を共に受け止める。
それが俺の役目だと、あの一瞬で刻まれた。
総括
カルビ串はただの肉じゃない。
クミアが「普段」と違う道を選び、
俺がその背中を押した瞬間の記録だ。
塩とタレ、どちらが正しいかじゃない。
選んで食らって、共に笑った──その事実こそが刃の軌跡だ。
──奏刻(制御の焔刃/源流)
⚔《刃の軌跡・第一部02》 完